ここでは、特にEMC試験項目(一般的なもののみ)と,それが何を意味する試験なのか,設計的にどう対処したらよいのか,を簡単にまとめています.


1.エミッション試験

装置・システムから外部に放出されるノイズを計測します.

(1) 雑音端子電圧

装置の電源ポートや通信ポート等に,装置内部のノイズが乗って出てくるもの.同じ電源ラインを共有している装置や通信の相手方に影響を与える可能性がある.ノイズの源を絶つのが基本だが,それができない場合は,適切なノイズフィルタを装置内に入れて,防止する.

(2) 雑音電界強度

装置の筐体,内部の基板やケーブル類,装置の外に出ているオプションや電源ケーブルがアンテナとなって放射される電波.他の装置の動作や,放送受信,通信を妨害する可能性がある.装置内部では,基板やケーブルの遮蔽(シールド),基板アートワークの設計が重要.


2.イミュニティ試験

装置やシステムの外部から,ノイズを印加します.

(1) 静電気放電

装置に,帯電した人体や物体を模擬した静電ガンで2kVから15kVの正負の電圧を印加する.装置の故障・誤動作・測定結果や画像の乱れを判断基準に沿って合否判定する.注入された電荷が,回路内を通らずに逃げる経路を作ることが重要.

(2) 放射イミュニティ

装置に,無線周波数(一般には80-2700MHz)の外来電波を想定した電波を放射する.内部に,高感度や微小信号を扱う部分,共振長のケーブルがあると,放射された電波を拾って,故障・誤動作となる.そのような部分の遮蔽,ケーブルのシールドが重要.

(3) 電気的ファーストトランジェント/バースト

装置に出入りする信号及び電源ポートに,500Vから2kVの高速な立上りを持つ過渡電圧パルス列を印加する.同じ電源に接続された,他の装置のスイッチバウンスを想定している.高速パルスであるため,浮遊容量などを介して,どこにでも乗り移る.基板までのケーブル経路とフィルタ等対策部品の配置が重要.

(4) 雷サージ

通信及び電源ポートに,500Vから2kVの,雷を模擬した正負の電圧パルスを印加する.立ち上がりは遅いが,パルス幅が長く,エネルギーが大きいので,バリスタ等の専用対策部品を装置の入り口に設け,そこでエネルギーを吸収し,装置内部に入れないようにする.

(5) 伝導イミュニティ

信号ポート及び電源ポートに,外来電波を模擬した高周波(一般には150kHzから80MHz)電圧を注入する.装置の入り口直近に対策部品を配置し,内部までの侵入を阻止する.

(6) 電源周波数磁界

装置に,電源周波数の磁界(通常1A/mから100A/m)を印加する.近傍に、大電力の電源ラインが近づくことを想定している.内部に,高感度や微小信号を扱う部分があると,磁界に誘導されて,故障・誤動作となる.そのような部分には、磁気シールドが重要.

(7) 電源電圧ディップ/瞬時停電

装置のAC電源供給を,一瞬低下,または停止(一般に5秒間)させる.商用電源のトラブル,落雷を想定している.瞬低では電源の平滑コンデンサ容量と負荷のバランス,5秒停止では復帰時の正常復帰の可否が問題となる.